未収配当金と配当期待権

2024年3月14日

 本記事では相続財産に上場株式等が含まれていた場合における「未収配当金」と「配当期待権」について解説します。

 上場株式などを所有している方が亡くなった場合、「有価証券」として株式を評価することになりますが、株式そのものだけでなく、その配当金も相続財産になるケースがあります。配当金は特定の日(基準日)にその株式を所有している人に対して支払われるものであり、相続開始のタイミングによって相続財産として計上する必要があるかが決まります。また、そのタイミングによって相続財産が「未収配当金」となるか、「配当期待権」となるかが決まります。

1.配当金が入金されるまでの流れ

  • 基準日に株式を所有していた(配当金をもらうことができる権利が確定)

   ↓

  (A)

   ↓

  • 株主総会で配当を出すことを決議(配当金の具体的な金額が決定)

   ↓

(B)

 ↓

  • 配当金が入金される

2.相続開始のタイミングによる違い

 上記の流れでは、①より手前で相続が開始した場合、株式は相続人が所有することとなり、配当金は相続人が自らの権利として受け取ることとなるため、その配当金は相続財産には含まれません。(A)の段階で相続が開始した場合、配当金が出る場合には配当金を受け取る権利は確定しているものの、具体的な配当金の金額や本当に配当金が出るかどうかが分からない段階です。実務上は配当金が入金された後に申告手続きを行うことになるので、具体的な配当の金額も明確になっていますが、相続開始日においてはあくまでも「配当を受け取ることができるかもしれない」という期待にとどまります。実際に配当が出た場合、本来その配当金を受け取るはずだったのは被相続人であることから、その配当金を「配当期待権」として相続財産に含めて評価します。

 また、(B)の段階で相続が開始した場合には株主総会は終わっているため、具体的な配当金の金額が明確になっています。配当金を受けることができるかもしれないという期待ではなく、配当金を受け取ることが確定しており、単にまだ入金されていないだけという段階です。そのため、「期待」という言葉を用いず、「未収配当金」として相続財産に含めて評価します。

●財産評価基本通達168(7)

配当期待権(配当金交付の基準日の翌日から配当金交付の効力が発生する日までの間における配当金を受けることができる権利をいう。以下同じ。)

●財産評価基本通達193

配当期待権の価額は、課税時期後に受けると見込まれる予想配当の金額から当該金額につき源泉徴収されるべき所得税の額に相当する金額(特別徴収されるべき道府県民税の額に相当する金額を含む。以下同じ。)を控除した金額によって評価する。

3.配当金の調べ方

 相続財産に含まれる株式について、配当金も相続財産として考慮する必要があるか確認する方法は、各銘柄の基準日や配当実績をインターネットで調べることが最も簡単な方法です。また、配当が出た場合には配当金の通知書が郵送されてきますが、そこで1株あたりの配当金額、権利確定日などの情報を確認することができます。

4.配当金の相続税評価額

 配当金の金額 - 源泉徴収される所得税額

 厳密には配当期待権の評価では”予想”配当金額から計算が始まりますが、実務上はすでに金額が確定していることがほとんどのため、実際の手取り金額で評価することになります。  配当金は相続開始のタイミング次第で相続財産になる場合とならない場合があるため、漏れやすい項目です。相続財産に株式が含まれている場合は注意して評価を進めましょう。